4417年6月24日
エラリアの第二王子、セルト様がお見えになりました。第一王子のガルテア様は今回もまた欠席されるそうです。
ここだけの話、セルト様とガルテア様は年が少し離れている事もあり、あまり御兄弟でお話をされないそうです。たった二人の御兄弟なのですから、仲良くして頂けたらと願わずにはいられません……差し出がましい意見でしょうか。
逆に、セルト様とレイ王子は年も近く、従兄弟同士であられるため、幼い頃から仲が良いのです。こちらのお二人の方が兄弟らしく見えそうなくらいですね。セイラ様とも親しくされており、久々に城の中が賑やかです。更に今年はキユウ様もその輪に加わったご様子。やはり女性が輪の中に入ると華やかさが増しますね。
4417年6月20日
レイ王子が、キユウ様の元に足繁く通っておられます。水神の次期神子であるセイラ様も同様です。休日の度に、3人でどこかへお出かけになります。
キユウ様――彼女は、不思議と人を引き付ける魅力を持っているのでしょう。素晴らしい魔道の才能と機知に富み、順当にいけば必ずや世界の歴史に名を刻むであろう人物です。ですが彼女は、ティアミストの魔道士であるが故に、決して歴史の表舞台に出ようとはしません。知り合って少ししか経っていない私ですら、それくらいは分かるようになってきました。キユウ様だけではありません。おそらく、歴代のティアミストの魔道士達は全てがそうなのでしょう。その事が歯がゆくもあり、また、それが故に、イリスピリア王家はティアミスト家を手放すことが出来ないのだろうと思うのです。
さて、星降りの準備もいよいよ本格化してまいりました。来週は、エラリアの第2王子であるセルト様もお見えになります。
4417年6月15日
大規模な会議がありました。内容は……あまり思い出したくありません。
キユウ様と親しくなるにつれ、わたくしは何が正しいのか、何が間違っているのか分からなくなってきます。キユウ様は心の優しい素晴らしい方です。それで良いのではないでしょうか。この目と心で感じるものが真実とは、限らないのでしょうか。
唯一の救いは、陛下がティアミスト擁護の考えを持たれているという事です。いつか、あのような偏見や確執無く、ティアミスト家とイリスピリア王家が真正面から向かい合える日が来るように。そう、願ってやみません。
血の因縁はかくも根深いものか。
4417年6月11日
キユウ・ティアミスト様とお会いしました。年齢よりも大人びた綺麗な方でした。ジェラルドが盛大に鼻の下をのばしていたので、絶対におかしな真似はしないよう、全力で念を押しておきましたけれども……まったく、油断も隙もあったものではない。
レイ王子に至っては、キユウ様を見て一瞬放心しておられました。普段異性にはあまり興味がない風に振舞っていますが……なるほど。ああいう方がタイプなのですね。
陛下も大層彼女を気に入られたようです。当初はそういう予定は無かったのですが、イリス魔法学校の特待生としてしばらく受け入れる方針で固まりました。キユウ様が在学中の第二魔法学校との連絡含め、バタバタした一日でした。来月は星降りの儀があります。これから益々忙しくなりそうです。
4417年6月4日
来週、ティアミスト家の次期当主となる方がイリスを訪れる事になったようです。そういえば、そろそろ結界の張り替えの時期ですね。本来ならば当主の役目であるそうですが、今回は次期当主の方が張り替えを執り行うのだとか。名はキユウ様というそうです。陛下から話を伺って驚いたのですが、女性で、しかもまだ16歳。レイ王子よりも年下ではありませんか! 若いのに次期当主としての責務を負うとは……いやはや、しっかりしていらっしゃる。どんな方なのか、今から非常に楽しみです。
ところで、今朝からレイ様とセイラーム様のお姿が見えませんが……あぁ、そうえば先ほど廊下で警備の者がバタバタと走り回っている音を聞いた気がします。もしや……いや、これ以上は考えないことにしましょうか。
4417年6月3日
本日、北の国レムサリアから、水神の神子の後継者であるセイラーム様がお見えになりました。 以前お会いして以来、かれこれ半年ぶりでしょうか。 相変わらず、齢5つとは思えぬ才智をお持ちの方です。それに引き換え、レイ王子ときたら……
先日もまた、ジェラルドを引きつれて町に繰り出していた様です。 レイ様もジェラルドも、衆目の中では特に、いろんな意味で悪目立ちする事を自覚すべきです(ジェラルドはある意味自覚しているとは思いますが……)。
酒も飲めぬ年齢から酒場をうろちょろし、酔っ払いに絡まれる事幾度となく。 その度に酔っ払いを蹴散らしてしまうのですから、後始末をする私の立場も考えて頂きたい。
……嗚呼、少々目まいがしてきました。
セイラーム様を見習って、少しは落ち着いて下されば、私も随分と助かるのですが。