追憶の救世主 第1部のあらすじ
※ 完全ネタばれです ※

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第1章「菜の花通りにて」
 シズク・サラキスは、少し童顔で、焦げ茶髪と不思議な青い瞳を持つ17歳の少女。オタニア国立魔法学校に身を置く見習い魔道士である。魔法は少し苦手、身軽で棒術を操る方が得意、という、魔道士見習いとしては少し変わり者。家族と呼べる存在の記憶はなく、魔法学校の校長カルナ・サラキスの養女として育ってきた。
 そんなある日の事、ルームメイトであり親友でもあるアンナ・アレセントの策略にハメられてしまい、シズクはオリアの町へとおつかいに走らされる事に。ところが、今はほとんど通る人も居ない『菜の花通り』を歩くうち、謎のメガネ好青年セイラと出会った事で、シズクは野盗や魔物が絡む何ともきな臭い事件に巻き込まれてしまう。魔物に囲まれ、絶体絶命の二人を救ったのは、セイラの護衛剣士リースと、セイラの呪術の弟子アリスだった。リースに敵ではないのかと怪しまれながらも何とか自分の潔白を証明しようとするシズク。そこへ、学校を抜け出したシズクを追っていた、オタニア国立魔法学校の教官ナーリアも現れ、舞台は魔法学校へと移る。


第2章「依頼」
 セイラはこの世の呪術師の頂点に立つ、水神の神子の一人だった。突然自らの身分を明かし、魔法学校の校長に会いたいと言い出すセイラに、ナーリアだけでなく、リースやアリスまでもが驚く。しかし、彼の奇行はそんな事でおさまるはずは無かった。オタニア国立魔法学校の校長、カルナ・サラキスとの面談がかなうと、セイラは更にとんでもない提案をカルナに持ち掛けて来たのだ。セイラの持つ、意志を宿す杖『偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)』を狙う魔道士、エレンダル・ハイン。彼の元に殴り込みを掛けるために、同行する魔道士として、セイラはなんとシズクを指名してきたのだ。大反対する一同を押し切り、セイラはカルナにシズクの同行を認めさせる。呼び出されたシズクは戸惑うものの、事件の裏に魔族(シェルザード)が居る事を知るや否や興味を示し、結局最後には、同行を引き受ける事になったのだった。


第3章「伝説の店」
 旅立ちの前夜、カルナの元をシズクが突然訪れた。預かって欲しいと言ってシズクが差し出したのは、彼女が孤児として引き取られる時に持っていた、昔の唯一の手掛かりである銀のネックレスだった。旅にこれを持っていく事に、言いようの無い不安を抱くシズク。しかし、カルナはそれを預かろうとはしなかった。代わりに彼女がシズクに語ったのは、ネックレスに刻まれた謎めいた文字の意味についてだった。
 翌日、ナーリアやアンナとしばしの別れを告げ、旅立つシズク。リースやアリス達との自己紹介も済ませ、彼らが向かったのは、菜の花通りに存在するマジックショップ『伝説の店 さそり堂』だった。店の主人ノートルから餞別にと銀の棒を貰い、準備は万端。長年住み慣れたオタニアからの旅立ちである。


第4章「乙女の消える町」
 今日の宿に。と立ち寄った町、カンテル。この町では先月から、美女が何人も失踪する事件が起きていた。一日だけだと思い、不安を抱きつつ町に滞在するも、翌日はあいにくの雨で出発は延期に。昔から何故か雨が嫌いだったシズクは、欝陶しさと妙な不安を抱く。そんな憂鬱な気分を吹き飛ばそうとシズクを買い物に誘ってくれたのは、アリスだった。男連中を説得して何とかリースを買い物に付き合わせようとするアリスだったが、リースは頑として了承しようとはしない。そんな彼の態度に、シズクは彼は自分を仲間として見てはくれていないのか、と不安を抱いてしまい、最終的にはリースと口論になって宿を飛び出してしまった。
 結局アリスと二人で買い物に行く事になったが、店を見る間もシズクはそわそわと落ち着かない。そんな中、突然出現した結界によってアリスが連れ去られてしまう。結界の中で出会った魔族(シェルザード)のクリウスは、その圧倒的な魔力でシズクを寄せ付けさえしなかった。恐怖に凍り付くシズクの頭に甦ったのは、昔の記憶であった。幼い頃シズクが住んでいた町は魔族(シェルザード)によって滅ぼされたのだ。
 宿に帰り、シズクがセイラにアリスがさらわれたと報告していた時、クリウスが再び姿を現す。クリウスは、エレンダル・ハイン本人が一行を彼の屋敷に招いていると伝えに来たのだった。セイラの杖、偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)とアリスを交換しようというのだ。


第5章「魔道士の城」
 目覚めたアリスは、クリウスの案内でエレンダルの元へと連れて行かれる。そこで彼女が見たのは、世にもおぞましい光景だった。エレンダルは、カンテルの町で美女を誘拐し、彼女達を使って数々の人体実験を行っていたのだ。彼の目的、それは永遠の命の創造だった。そのために彼は、神の力を宿すと言われているセイラの杖を欲していたのだ。
 一方エレンダルの屋敷に到着したシズク達は、クリウスの案内で応接室へ案内される。和やかにお茶でも、と言った感じの出迎え方だったが、エレンダル本人が現れた瞬間に状況は一変した。クリウスの結界魔法で3体の魔物が召喚されると、シズク達に襲い掛かってきたのだ。脱走してきたアリスも戦闘に加わるが、戦況は不利のまま進行。そんな中、シズクに魔物の凶爪が迫る! シズクの代わりに魔物の爪を受け、深い傷を負うリース。このままでは彼の命が危ない。仲間の死が脳裏に過ぎった瞬間、シズクの頭に不思議な声が響いた。『気付きなさい』と――
 深手を負ったリースが見たのは、不思議な言語で呪文を紡ぐシズクの姿だった。魔力が低く、魔法が苦手だったはずのシズクの周囲に、寒気がするくらいの魔力が収束して行く。やがて、完成した魔法は3体の魔物を一瞬で蒸発させてしまうほど強力なものだった。魔法の衝撃で、エレンダルの屋敷は倒壊に追い込まれる。『魔道士の城』の最後だった。


第6章「それから」
 エレンダルの屋敷での一件後、目覚めたシズクが居たのは宿屋の一室だった。三日もの間、シズクは眠り続けていたらしい。状況が全くつかめないシズクに、リース達は説明を始める。
 事件後、魔法連の牢獄に入れられていたエレンダルは何者かによって殺害されてしまったらしい。リースが言うには犯人はクリウスと言う線が濃厚らしい。あの事件以来、クリウスは完全に行方知れずになっていたからだ。
 やがて話はシズクの放った魔法の事に移るが、シズクは魔物達を一瞬で消してしまった魔法に全く心当たりがないと言い出す。リースによると、彼女があの時唱えていた呪文は魔族(シェルザード)語であるらしい。事件は解決したのだが、シズク達の胸には大きな疑問が覆いかぶさったままだった。


第7章「月夜の来訪者」
 エレンダルの一件が片付き、いよいよセイラの本来の目的であるイリスピリアへと出発する事になった。出発の前夜、軽くミーティングを済ませてからシズクは自室にさがる。そんなシズクを待ち受けていたのは、「ごきげんよう、シーナ様」という不可解な女の言葉と姿だった。初めて会う女だったが、彼女の瞳を見ただけでシズクは直感する。女は魔族(シェルザード)である、と。
 女の目的は、驚いた事にシズクが持つ銀のネックレスであるようだった。何故こんなものが狙われるのか訳が分からないシズク。だが、女に迫られ首を絞められるうちに意識は少しずつ混濁して行き、薄れゆく意識の先にシズクが見た『夢』が答えをくれた。何故だか分からない事情で、幼いシズクが住んでいた町は襲われ、多くの人々が死んでいった。そんな中、シズクの母親は決意を込めた瞳でシズクにネックレスを託し、戦場へと赴いていったのだ。「この石は偉大なる遺産、荷が重いものを託すことになる」そう、悲しげな瞳で言い残して。
 夢から覚めたシズクが見たのは、リースとアリスの姿だった。彼らが駆けつけた瞬間、あの女は居なくなってしまったらしい。セイラの指示でシズクの部屋を訪ねたというリース達。シズクは大きな疑問を抱えながらセイラの部屋へと向かう。
 出迎えたセイラにシズクは、自分は魔族(シェルザード)ではないのかと問いかける。シズクの持つ不思議な青い瞳の色が、クリウスや今宵シズクを襲った女のものととてもよく似ている気がしたからだ。だが、そんな疑問はセイラによってぴしゃりと否定されてしまう。
 自分が何者なのか知りたいと迫るシズクに、具現化したセイラの杖、偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)の『リオ』が真実を語りはじめる。シズクは偉大なる魔道士の一族『ティアミスト』の最後の生き残り。500年前世界を救った勇者シーナの血を引く人間だったのだ。



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