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第1章「イリスピリア」
6.
――ようやく厄介ごとが去った。
そう心の中で一人呟くと、イリスピリア王は深いため息を零した。瞳を閉じ、執務用の椅子に体を深く埋める。そうしていると、体の力が少しずつ抜けていくようだった。
さきほどまでこの部屋を訪れていた彼の娘は、随分ご立腹な様子で部屋を出て行ってしまった。今頃は、怒りで城の廊下を踏みしめながら歩いている事だろう。彼女を憤慨させたのは、他ならぬ自分なのだが。
「ティアミストは、イリスピリアを乱す。か」
ふ、と自嘲的に笑う。我ながら随分と無茶苦茶な事を言ったものだと思う。
ティアミストがイリスピリアを乱すなど、未だかつてそんな事が起こったためしがあったかというと、答えはノーだ。むしろ、彼の知るティアミスト家の魔道士達は、イリスピリアのために尽くしてくれた。……いや、尽くす事を強いられていたと言った方がより正確だろうか。
それを一番良く知っているのは、他ならぬ彼自身である筈だった。頭では分かっている。だが、他でもない、彼の心がそれを拒絶していた。
「この国ではない。ティアミストが……いや、あの娘が乱すのは――」
そこで言葉を切ると、王は執務室の机上に置かれている一枚の写真へと視線を注ぐ。
(あの娘が乱すのは、私の心だ)
写真の中には、四人の人間達が写っていた。
それをひとしきり懐かしそうに見つめた後、イリスピリア王は再び難しい顔に戻る。眉間には、これでもかというくらいの深い皺が刻まれていた。
「似すぎているのだよ――彼女は」
突然のアリスの来訪に、シズクはうろたえていた。
正直なところ、もうしばらく誰にも会わずにいたかったのだ。イリスピリア王の例の言葉が頭の中から離れぬうちは、どんなに取り繕ってもシズクは暗い表情しか出来ないだろう。だから、一通り自己解決して、いつもの表情を浮かべられるようになるまでは部屋から出ないつもりだった。
心配させたり気を使わたりするのが嫌というのも理由の一つ。しかしそれ以上に、イリスピリア王がリースの実の父親であり、セイラの旧友である事が大きかった。やはりこんな状況で彼らに会うのは、気まずいだろうから。
「えっと……どうぞ。とりあえず座って」
そう言うと、シズクは自分が座るのと向かいになるソファを手で示す。そして、無駄だと分かりつつも、目の前のアリスに向かって笑顔を浮かべようとした。
「…………」
だが、鏡などで確認しなくとも、その表情が『力の無い、から笑い』に終わっている事がなんとなく分かる。
そんなシズクの様子に、アリスは心配の色を強くしたようだった。不安そうな表情でこちらを見つめてくるのだ。だがやがて息を一つだけつくと、ゆっくりこちらに歩み寄ってきて、促されたとおり、シズクと真向かいのソファに腰掛けた。
ぎこちない沈黙が降りる。
「やっぱり混乱してるよね……」
遠慮がちな声でそう言ったのはアリス。彼女は手を組む仕草をすると、少しだけ前のめりになる。話をしようとしている姿勢だ。
「正直、私もリースも、あの師匠ですら驚いてるの。おじ様があんな事を言うなんて……あ、おじ様っていうのはイリスピリア王の事ね。私とリースは又従兄弟に当たるから……」
そう言ってアリスは取り繕うように笑った。つられてシズクも苦笑いになる。会話が酷くぎこちない。
「普段はあんな人じゃないんだけど。なんでなのか……」
「――ティアミスト」
えっとアリスが零す声が聞こえた。シズクが端的にその単語を口走ったのが意外だったらしい。視線をアリスの方に向けると、シズクは小さく息をついた。
「……ティアミスト家の人間だから、拒絶されたんじゃないかな」
俯き加減で独り言のように呟くと、シズクは笑顔を作るのは無理と判断して、正直に、疲れた表情をアリスへ向けた。視線の先のアリスの表情は気遣わしげだった。
「ティアミストって何なんだろう」
不安だけが募る。
「イリスピリアに来たら分かると思ったのに、分かるどころか益々分からなくなってる。自分が何なのかすらも、分からなくなる。ねぇアリス。わたし、どうしたら――」
「シズク」
アリスの凛とした声が、部屋に静かに響いた。きつい印象は受けない。それよりむしろ、とても気持ちが落ち着く声色だった。
いつの間にか訳の分からない事を口走り、シズクは混乱し始めていたらしい。言葉を紡ぐうちに涙目になっていることに、今やっと気付いたくらいだ。アリスの声で、シズクの気持ちは少しだけしゃんとする。
「――飲み込まれないで」
声は、優しく、けれども重く。シズクの心に染み込んで行った。アリスはその一言を言うと少しの間黙る。気になってシズクが彼女と視線を合わせると、視線の先のアリスは今まで見た事も無いくらいに真剣で優しい顔をしていた。
「…………」
「……シズクは確かにティアミスト家の人間なのだろうけれど、生まれた家や、その身に宿る血がどうっていうのよ。それがあなたの事を縛る権利はどこにもない。そんな権利、あっちゃいけないはずよ」
闇色の瞳で静かに見つめられる。神秘的なその色合いは、シズクの心を少しずつ落ち着かせてくれていた。
「自分をしっかり持つの。あなたはティアミスト家の人間である以上に、シズク・サラキスでしょう?」
瞳を潤ませて、しかし力強くアリスは言う。それにシズクは曖昧に頷いてみせる。
(――そう、わたしはシズク・サラキス)
ティアミスト家の人間ではあるのだろうけれど、それも今や血の流れだけの事。ティアミスト家の一員である自分は12年前に失ってしまったのだ。
「気にしないでとは言えないわ。あんな事を言われたんだもの、傷ついて当たり前よ。でも、シズクは、シズクとしての自分をティアミスト家というものに塗り替えられてしまうのは嫌でしょう?」
寂しげに笑うアリスの言葉に、シズクは今度は先ほどより強く頷く。
シズクとして生きてきた12年間を否定されてしまうのは、やはり嫌だった。否定されてしまうと、それまでの出逢い全てが否定される事になるような気がするのだ。カルナ校長もナーリアもアンナも、そしてセイラ達との出逢いも。その気持ちだけは、確かに自分の中にある。
「……だったら私は、シズクであるあなたを認めるわ。例えもしおじ様がシズクを否定しようとしても、私はあなたを否定なんてしない。一人の人間として、仲間として……友達としてシズク・サラキスを認めるわ」
それはきっとセイラにしてもリースにしても同じことだ、とアリスは言う。
実の父や大切な旧友を敵に回してでもシズクの味方になってくれるとは、やはりちょっと信じられなかったけれど、アリスのその言葉は嬉しかった。
飲み込まれないで、と彼女は言った。大きな流れに、自分という人格を飲み込まれてしまってはいけない。そういう事なのだろう。
(自分をしっかり持たないと)
そう思うと、気持ちが随分楽になった。靄がかかったようだった頭の中も大分スッキリした気がする。
「……そうだよね。わたしはわたしなんだよね」
言って、シズクは小さく笑顔を見せた。今度は先ほどよりは上手く笑えたのだろうか。視線の先でアリスが、少しだけホッとしているところから、そうだと思った。
「――とは言え、やっぱり知っておかなければいけないとは思うのよね」
「?」
シズクが落ち着いたところで、見計らったようにアリスが新たな話題を持ち出してくる。
それが本題だとばかりに、彼女は更にシズクの方へ向かって前かがみになると、先ほどとは違う種類の真剣さを、人形のように整った顔に乗せた。アリスが言わんとしている内容が全く予想できないシズクは怪訝な顔で首を捻る。と、そこへ新たな声が二人の会話に舞い込む事になった。
『ティアミストの事について、よ』
へ? とシズクが零したときには、もう『彼女』はシズクの眼前に出現していた。
ポォン。とやたらとメルヘンチックな音と煙と共に現れた存在。全身を紺碧の衣装に包んだ、手のひらサイズの小さな美女。
――偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)、ことリオだ。
「リ、リオ!?」
突然のリオの登場に、シズクはあからさまに狼狽する。
「何でいきなり? 一体どこから!?」
この部屋にいたのは、自分とアリスの二人だけだったのだ。そのアリスがセイラの杖、偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)を手にしていたというのなら、リオの登場にもまだ納得が出来ただろう。しかし、アリスは偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)どころか、自分の杖すら所持していなかったのだ。一体どうやって――
「私がリオに頼まれたのよ。シズクの所へ連れて行ってくれって」
目を白黒させているシズクの様子をおかしそうに見つめながら、アリスが言った。そして彼女はおもむろに腰に下げたポシェットから何かを取り出す。
「?」
取り出されたそれは、蒼い輝石だった。どこか見覚えがある。どこで見たのかシズクは記憶を探ろうとしたが、
「これ、師匠の杖についてる石よ」
記憶を探る前に、アリスが答をくれた。言われて思い出す。セイラの杖の先には、綺麗な青い石がはめ込まれていたのだ、と。
『取り外し可能なのよ。私の本体は杖じゃなくってこの石って訳』
得意げにふんぞり返りつつリオが言う。
「嘘……伝説の『杖』って言うんじゃないの? わたしてっきり、リオは杖そのものなのかと……」
ぽかんと口を開けながらシズクは言った。意外だったのだ。魔法学校では、水神の神子が持つ意思を持つ杖、それこそが偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)だと教えられてきた。
500年前の悪い魔法使いの話にしたってそうだ。魔法使いは一本の杖を作り、絶大な力を振るっていた。それを、巨人族の王子とミール族の王子が戦いの折に5つに割ったのだ。偉大なる蒼(イアーリオ・ワイス)はその中の一本だ。伝承にはそう記されてある。
『お馬鹿ね。よく考えなさいな』
少々混乱気味のシズクを呆れた様子で見つめながら、リオは尚ふんぞり返る。
『伝承では500年前のあの時、一本の杖が5つに分けられ、そのうちの一つが『私』になったって事になってるけど、普通一本の杖が5つに分けられて無事な訳ないでしょう? あれは所謂比喩ってヤツよ』
「比喩?」
『そう。魔法使いの力の象徴は『杖』でしょう? だから私達は杖に例えられた。でも実際はね、神の力を宿す5つの『石』よ』
「石……」
リオと目を合わせつつ、シズクは呆けた様子で呟く。何もかもが初耳だった。伝承のまま鵜呑みにしていたのだ。説明されたら確かに、と思うが、今の今まで疑った事もなかった。
「私も、さっきリオに石を外して連れて行けって頼まれるまで知らなかったのよ。知っていたのは師匠くらいじゃないかな」
空中でふよふよ浮かんだままのリオの隣で、アリスも苦笑いを浮かべる。
杖ごと持ち歩くのは非常に目立つ。特に城の者達は、この伝説の杖が何たるかを知っているのだ。セイラ以外の者が持ち歩いていたら、たとえそれが彼の弟子だろうと訝しがるだろう。そう考えたリオの機転だったらしい。
「へぇぇ。リオって何でも知ってるんだね! さすが伝説の杖……じゃなくて、石か」
『ま、どっちでも良いわよ。で、話を元に戻すんだけど』
そこでリオはこほりと芝居がかった咳払いを一つする。そうして今までとは一転して、サファイアの瞳に真剣な色を宿すと、
『知りたい? ――ティアミストについて』
「…………」
問いただすような口調でシズクを見つめてくる。その一言だけで、場の雰囲気は一転、張り詰めたものに変わった。
ティアミスト。その単語を聞いただけで、今は胸が締め付けられる。
『知りたいと言うのであれば、今のシズクに話せる範囲で、私は全てを語るわ。但し――必ずしも綺麗な話ではない。それだけは言っておく』
感情を極力押し殺したような声で、リオはそう告げる。彼女と目を合わせたまま、シズクは黙り込んだ。まるで、声の出し方を忘れてしまったみたいだ。紡ぐべき言葉が見つからない。
(わたしは、何がしたかった?)
心の中で自問自答する。今日一日でいろいろな事が起こりすぎて、自分は今、酷く混乱している。
本来ならば、自分の正体とセイラが何故自分を指名したのかを知ってしまったあの瞬間、オタニアの魔法学校に帰っても良かったはずだ。それでも、イリスピリアまで着いて来た理由は何だっただろう。迷いながらも自分の中で出した結論は何だっただろう。
(……自分を、知るためじゃないか)
胸がまた、強く締め付けられた。
傷ついても拒絶されても、自分はそれを知りたかったのだ。受け入れられるためにここに来たのではない。セイラに依頼された魔道士としてここに来たのでも無い。自分の意思で、シズクはここに来たのだ。来たからには、最低限自分の目的は果たさなければ。
「知りたい」
飛び出した声は、答えだった。少し戸惑いながらも、確固たる意思を瞳に灯して目の前のリオを見つめる。
「教えてリオ。わたしはきっと、知らなきゃいけないんだ」
広くて豪華な部屋に、一際澄んだ声が響いた。
ギィと重苦しい軋みを上げて、扉は開いた。
昼間だというのに、外の雰囲気とは違い、この部屋だけは薄暗かった。リサはあたりをきょろきょろ確認すると、タイミングを見計らってからするりと部屋の中へと滑り込む。そうしてそうっと扉を閉めた。
いかにこの城の王女であろうとも、ここに無断で入る事は普通禁止されているのだ。誰にも見つからずに行動しなければならない。
場所は、城に存在する国立の図書館だった。世界中の書物が集められた世界一の図書館。その中でも今いるこの部屋は、門外不出の書物ばかりが安置されている特別な保管庫だった。
この扉は普段厳重に鍵で施錠されており、更にその鍵は、図書館の奥に厳重に保管されている。そんな場所に、何故リサが鍵もなく忍び込めたのかというと簡単だ。――血だ。イリスピリア王家の血も、この扉の鍵になり得るのだ。
(ま。痛いのが玉に瑕よね)
一人心の中で呟きながら、リサは先ほど自身で傷つけた指先を舐める。少しだけ鉄の味がした。
血を扉の獅子のマークに捧げると、ここの扉はあっさりと開いてくれる。城自体が古い建物だから、そういう魔法がかった代物が多く残されているのだろう。この事実を知っているのは普通はおそらく王だけなのだが、リサは昔やったいたずらの産物でこの事を知っていた。
「…………」
息を一つつくと、リサはゆっくりと前進する。滅多に開かれる事が無いこの部屋は、古い書物独特の匂いがした。所狭しと立ち並ぶ背の高い本棚には、これまた所狭しと多くの本が並べられている。どれもこれも、偉大な書物の初版本だったり、世界に一つしか残っていない本の生き残りだったりする。その中から目的のものは無いかと、リサは慎重に視線を右往左往させた。そんな時だ。
「――――!」
背後から、リサの肩に突然手が置かれたのだ。
何の気配も無かったはずの部屋に、誰か居たのだろうか。それとも見つかった? いや、もしかするとこれは――
「……ぃ……」
ある考えに行き当たって、リサはみるみる顔が青ざめていく。よく聞くのだ。長年使われない部屋などによく出没すると。すなわち、『幽霊』というヤツが。
背中に寒いものが走り抜ける。震える唇は、悲鳴を吐き出さんとした。
「いや――」
「あーもう、大声出すなって!」
悲鳴を吐き出す寸でのところで、大きな手に口を塞がれてしまう。もごもご言いながら必死の抵抗をするリサだったが、
「俺だって! 俺!」
リサを押さえつけた状態のまま、声の主はリサの視界に姿を現した。自分と同じ色の瞳、自分と同じ色の髪。
(リース!?)
目の前に突然現れた弟の姿に、リサは今度は違う意味で驚いた。目を丸くしてその場に硬直する。
リサが抵抗をやめ、大人しくなった事を確認したリースは、ふうっと息を吐くと、ようやく彼女を解放してくれた。自由になった瞬間、慌てて身体を彼の方向へ向け、もう一度確認してみるが、間違いない。帯剣こそしていないが、さきほど別れた時と全く同じ格好をしたリースが目の前に立っていた。
「なんでアンタがここに!?」
場所を考慮して、小声でリサは弟に問う。
「それはこっちの台詞だって。人目を忍んでこんな場所で何の探し物だよ?」
問いに問いを返す形で、リースも小声で答える。
「私は別に……大した調べものじゃないわよ」
「ほぉ。こんな場所に大した事無い調べものをしに?」
うさんくさい。と言う様に両腕を組み、半眼で見つめてくるリースに、リサはムッとなる。
「あんたこそなんの調べものよ! わたしが先にきいたんだから、あんだが先に答えなさいよ!」
「どういう理屈だよ。全く――」
そんな調子で、二人が小声による姉弟喧嘩を繰り広げている時だった。
――ガチャンッ
扉の鍵が開けられる音が響いたのだった。言い合いを止めて、二人は同時に沈黙する。そして、戦慄した。
鍵として王家の血を用いる事が出来るのは、現在この世にリサとリース。そして彼女達の父親であるイリスピリア王の3人のみである。今ここにはそのうちの二人が既に存在する。とすると、この開錠の音は、王によるものか、あるいは正式な鍵を持つ図書館の人間のものかのどちらかになってしまう。可能性として、後者の確率が圧倒的に高い。だが、どちらにしてもリサ達にとって好ましくない事態である事だけは代わりが無かった。
(ど、どうしよう)
額に脂汗が浮かぶ。思わず隣に居るリースの顔を見るリサだったが、弟は同じく額に脂汗をかきながら、渋い顔を作るだけでどうにもならないといった調子だった。
そうこうしている間に扉はゆっくりと開き、鍵を開けた張本人が部屋の中に足を踏み入れようとしてくる。万事休すかに思われたが――
「……まったく。考える事は皆一緒なんですかねぇ」
開いた扉からかかったのは、のんびりとした口調のそんな声。焦るという言葉をしらないこの男は――
「セイラ!?」
「セイラ様!?」
リサとリースの声が見事にハモる。彼女達の目の前で当のセイラは、ゆっくりと部屋の扉を閉じると闇色の瞳をこちらに向けた。
「無断で忍び込んで後で叱られるより、僕のように正式な許可を取ってここに入れば良いものを。イリスピリアの血は面倒くさがりの血のようですね」
右手に持った鍵をくるくる弄びながら、皮肉たっぷりにセイラは言う。
「セイラ様、一体こんなところへ何をしに?」
「貴方達と全く同じ事を調べに、ですよ」
「…………」
セイラの言葉に、リサもリースも口をつぐんで何も言わなくなる。セイラはそれを黙って確認すると、
「ティアミストの事を知りに――」
不自然なくらい落ち着いた口調で、言った。
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