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第10章「それぞれの覚悟」




 ――黒い群れが、追いかけてくる。

 これに追いつかれてはいけない。群れに呑まれた時、それは自分の命の終わりを示す。同行人だった少年は、先に魔物たちの餌食にされた。血生臭いにおいが鼻につく。恐怖が足をもつれさせ、呼吸を乱す。限界だった。

 「リースッ!」

 そんな時、自分の窮地を救ってくれたのが母だった。ドレスを身に纏って剣を振るう彼女の姿は、ある種異様なものがあった。明らかに戦闘をするための格好ではない。自分の危険を知って、十分な用意をする間もなく飛び出してきたのだろうと知れる。

 「リース、逃げなさい!」

 剣は、次々と魔物を切り裂いて行く。母の剣は一流だった。イリスピリア国内でも、まともにわたり合える人間はそう多くない。息子であるリースも、それを信じて疑わなかった。いや、今も疑ってなどいない。ただ、今はあまりにも多勢に無勢だったのだ。黒い群れは、異常とも呼べる数の魔物達からなる集合体であった。どんなに達人と呼ばれる使い手でも、たった一人で相手をするには無理がある。
 (嫌だ。一人でなんて逃げられない)
 声も出せず、首を振る事で拒絶を示す。母を一人置いて逃げるなど、出来る訳がない。先ほどまで感じていた、自分の命が失われる事への恐怖と同じくらい、母の命が失われる事は恐ろしい事だったから。
 ドンッという鈍い音が聞こえたのは、再びリースが首を左右に振った時だった。生暖かい何かが少しだけ自分の顔を濡らす。何が何だか、理解する事が出来なかった。ただ視界を占めるのは、魔物の黒い群れと――
 「……逃げなさい。貴方は、イリスピリアの未来に生きなければならない人間よ」
 「母、様――」
 母につけられた剣の稽古の時にも、リースはここまで厳しい声で何かを告げられた事は無かった。
 目の前の母は、いつの間にか血に染まっていた。淡い色のドレスは、見る間に紅色の鮮やかな色へと染め上げられていく。返り血ではない。紛れもなく母自身の流す血だ。意志の強そうな青い瞳を細めると、そのままずるりと、彼女はリースを庇うようにして崩れ落ちて行く。咄嗟に受け止めた手に、生暖かいものが触れた。
 「――――う」
 幼い身では、母の体を支える事など出来なかった。共に倒れるような形で地面に膝をつく。
 血の匂いがする。大切な人が、死んでしまう。黒い群れが来る。鋭い牙と爪で、同行人のあの少年のように、切り裂かれて殺される。

 「うわぁぁぁぁぁぁ――――っ!」

 叫んだ瞬間、視界が真っ白に染まった。それが、自分の中の『何か』である事には本能的に気づいていたが、湧き出てくる力が大き過ぎた。そして、それらを制御するには自分は幼すぎたし、何よりも心が乱れ過ぎていた。
 突然枷を外されて暴れ出した『光』は、一瞬で黒い群れを呑みこみ、消し去ってしまう。だが同時に、強すぎる光はリースの体をも蝕んで行った。熱いものが体の中心から逆流してきて、口から飛び出していく。嘔吐を繰り返すうちに、やがてそれは吐血へと変わっていった。気分が悪い。体中が軋みを上げる。どこが痛むのか判断もつかなかった。『光』に、呑まれてしまう。
 「――――っ」
 苦しくて、眩しすぎる。光はイリスピリア王家の象徴であり、国を守ってくれる存在だと、そう信じていた。それなのに、この身に宿る光は強すぎて直視する事も叶わない。
 どうにかしてこの力から逃げたくて、必死で手を伸ばした。薄らぎかけた意識の先に見えたのは、柔らかな銀色だった。血で汚れた手を嫌がりもせずに、銀色は手を差し伸べてくれる。自分を受け入れてくれる。しっかりと手と手が握られる。――それは優しくて、穏やかなものだった。






1.

 「――――!!」

 大きく息を吐き出して、瞳を開けた。まるで長時間水の中で息を止めていた後のようだ。心臓の鼓動がすぐ耳元でがなりたてて煩かった。乱れた息遣いのまま、やや混乱気味にリースは視線を右往左往させる。ここは一体どこだろう。自分は一体どうしたのだろう。
 「……あ」
 まず最初に視界に飛び込んできたのは、独特の色をした瞳を、驚愕で見開いた少女の姿だった。同じ歳なのに、童顔の抜けきらない少女。
 「シズク」
 名前を呼ぶと、ほとんど条件反射で彼女は頷く。心なしか、普段よりもその動作はぎこちなく見えた。怪訝に思うも、戸惑いを見せる彼女の視線を追ううちに、一体今がどういう状況なのか把握するに至る。シズクの右手首を、リースの右手が思い切り掴んで居たのだ。
 シズクから見下ろされている今の状況を考えたら、自分はベッドで横になっているという事が分かる。ベッドサイドに佇むシズクの背後には、木造りの落ち着いた部屋が見えた。
 そこまで来て、ゆっくりと思考が回り始める。シュシュの町で、魔物が現れたのだ。町を走り回るうちに、赤髪の魔族(シェルザード)と戦って……そして……クリウスが死んだ。
 「――――」
 ぬるりとした血の感触を思い出して、反射的に眉間に皺を寄せる。気分が悪かった。
 それから自分はどうしただろう。あの後、シズクと合流して、軍の指揮をとっていたガウェイン大臣が現れた所までは覚えている。混乱する状況の中とりあえず休むように言われた。これといった外傷は負っていなかったが、きっと酷い顔をしていたのだろう。本部の部屋を一つ借りる事が出来たので、ベッドに寝かされて、それから一気に眠りに落ちた。
 「今、何時?」
 「え? ……えーと、9時位。リースが寝てからまだ3時間程しか経ってないよ」
 「3時間か」
 まだ体がだるい。もう少し眠らなければ、本調子には戻れそうにない。シズクの手首を掴むのとは反対の手で、額の汗を拭った。酷い量の汗だ。
 「随分、うなされてたみたいだけど」
 「…………」
 心配そうなシズクの顔を見て、僅かに胸に痛みが走った。
 あぁそうだ。夢を見ていたのだ。8年前の記憶――悪夢に等しい夢だ。あまりにリアル過ぎて一瞬現実との区別がつかなかったが、自分は確かに今17歳で、9歳ではない。ここはエラリアの森の中ではなく、シュシュの町だ。
 「結局、何も変わって無い……か」
 弱さは捨てられたものだと思っていた。ようやく決心して、過去と向き合えたと思った矢先、突きつけられた現実はこんなものだ。自分はあの頃から少しも進歩していない。結局また、目の前で赤い血が散った。
 全てが終わった事だし、過去は変わる事はない。頭ではそう納得しようとしていたが、不安がまだ自分の中に残っているのが分かる。それを悟られまいとして、極力感情を顔には出さないよう努めた。代わりに、シズクの指に自身の指を絡めさせる。そうしていると、不思議と気持ちが落ち着いて行った。
 「リース?」
 温かい指の感触を感じて、ぼんやりと、納得する。あの悪夢の中、必死で手を伸ばして掴んだ銀色は、間違いなくこの手だったのだと。未だ寝ぼけた頭で考えているうちにふと、イリスを発つ前の晩に、姉と交わしたやりとりを思い出した。頭に浮かんだのは、イリスピリアの送り出しの言葉だ。

 ――その旅路に、光の加護がある事を祈って。帰郷の先に、闇夜の安息がある事を誓って。

 「闇、か」
 「え? 何?」
 無意識に、強く腕を引いていた。ぽすんという、乾いた音がすぐ耳元で聞こえる。同時に、程良い重さを胸の上で感じていた。焦げ茶色のポニーテールが目の前でさらりと舞う。
 水神が予言した『闇』は、世界を破滅へと導く存在らしい。それ故に父は、シズクに光となる事を懇願した。闇は悪しきもの。目覚めさせてはいけない存在。だが、光が強すぎる自分にとっては、『闇』は安息をもたらす存在なのだと、なんとなくそう思う。
 「リース……もしかしなくても、物凄い勢いで寝惚けてる?」
 「さぁ……でももう次は……うなされたりしない」
 口から零れた言葉は、シズクの質問にさっぱり答えられていないものだった。我ながら、支離滅裂な事を呟いていると思う。何故こちらを見るシズクの顔が赤いのだとか、今しがた自分が何をしでかしたかだとか、もう考えられる余裕は残っていなかった。再び睡魔がやってくる。先ほどとは違って、今度は安らかな眠りになるだろう。目が覚めた自分はきっと、今の事を何も覚えていない。
 難しい問題がたくさんある。全てが終わってる訳じゃなく、むしろそのほとんどが始まったばかりだ。だけど、もうひと眠りしてから全てと向き合いたい。今はただ、闇夜の安息を。
 「――――」
 そうこう考えているうちに、リースは二度目の眠りへと落ちて行った。






 バタンッ! と盛大な音を立てて扉を開け放つ。逃げるようにして部屋の外に滑り出ると、同じくらいの大音量でもって扉を閉めた。これでもかと言うくらいに息が上がっている。心拍数も急上昇だ。シズクは真っ赤な顔で、扉に背中を預けた。
 (まったく、なんだってこんな……!)
 全力疾走した訳でもないのに、まるで長距離を走りきった後のように息苦しい。
 リースの様子を見るために、彼に宛がわれた本部の部屋を訪れていたのだ。随分と消耗していたから、きっとまだ寝ていると思った。実際、シズクが部屋に入った時点で彼はまだ眠りの中で、最初にこの部屋を去った時と、ほとんど状況は変わっていなかった。リースが酷くうなされていた事を除けば。
 苦しそうな顔をしていた。悪夢を見ている事は、誰の目にも明らかな事だった。あんな事があった後だから、本気で心配したのだ。額に汗が浮かんでいたから、それを拭おうとして右手を伸ばした。そうしたら、あんな――

 「リース様の様子は如何でしたかな?」
 「ひゃぁぁぁっ!」

 絶妙なタイミングで声をかけられたものだから、おかしな悲鳴を上げてしまった。が、上げてから物凄く後悔してしまう。シュシュの町の惨事から、まだほとんど時間は経っていない。皆それぞれの役目を果たすために走り回っている最中であるし、そんな時に、こんな間抜けな大声を上げてしまうなんて、本当に失礼極まりない。
 「?」
 しかし、悲鳴を向けられた張本人は全く意に介していないようだった。シズクの顔を不思議そうに見下ろしながら、首をかしげる。
 「ガ、ガウェイン大臣」
 目の前に現れた人物――ジェラルド・ガウェイン大臣に、シズクは引きつった笑みを向けた。短く切りそろえられた金髪に、温和な微笑みをたたえる紳士。軍の総司令官というのだから、もっと体格の良い、怖い人物を想像していたのだが、大きく予想を裏切られた形だ。尤も、町で彼と遭遇した時は、そこまで考える余裕などなかったが。
 「リース様は目を覚まされました?」
 「いえ……。一瞬目を覚ましたんですけど、また寝てしまいました」
 「そうですか。では、出なおす事としましょうかね」
 言って、大臣は肩をすくめた。扉の前に居た事からして、彼もシズクと同じで、リースの様子を見に来たのかも知れない。それが今で、本当に良かったと思う。もしもあと少し早く大臣が現れて、あの光景を見られでもしたら、あらぬ誤解を受けてしまうに違いない。
 「それはそうと。あの魔族(シェルザード)の少年の事ですが」
 「――――」
 次なるガウェイン大臣の言葉に、シズクは一瞬で身を固くした。悲愴なリースの顔が記憶の中に蘇る。何も出来なかったと。吐き捨てるように後悔を口にした。そんな彼の背後に、街路に横たわるクリウスが居たのだった。
 結論から言うと、手遅れだった。側に行って確認するまでもなく、あの時点で既に、クリウスは事切れていたのだ。
 「この町に埋葬する事は避けた方が良いと思いまして。……森の中に、大きな湖があるのです。その畔に密葬する方向で話が進んでおります」
 「そう、ですか」
 力なく返事をするのがやっとだった。
 シュシュの町を魔物の海に変えたのは、紛れもなくクリウスだ。それが彼の本意であろうとなかろうと、彼の召喚魔法が、多くの町人の命を奪った事は変えようのない事実である。カンテルの町で、美女数人を間接的に死に追いやったのも彼。エレンダルを殺害したのもおそらく彼。クリウスがしてきた事を考えると、これは当然の報いなのかも知れない。だが……
 「死者に罪は問えません。死をもってあの少年は、その罪を償った。……そう納得しないと、貴方やリース様まで潰れてしまいますよ」
 あまりに酷い顔をしていたのだろう。慰めるような優しい響きで、ガウェイン大臣は言った。
 クリウスが犯した事は消えたりはしない。死者は決して戻っては来ないのだから。だが、クリウスもまた、もう戻っては来ない。この喪失感は、一体何だろう。様々な事が絡みあいすぎていて自分でも理解する事が出来ない。ただ一つ確実に言えるのは、「悲しい」という感情だった。目の前で誰かが死んでしまうという事実は、たとえそれが敵となる人物であったとしても、悲しむべき事だった。
 「彼は、リース様をかばって命を落としたようですね」
 「はい。そんな風にリースが言っていました」
 ぼんやりと、どこか遠くを見るようにシズクは目を細めた。あの時、リースの上着を濡らしていた血はクリウスのものだった。ダイモスとやり合ったあと、消耗しきったリースの前に、あの魔族(シェルザード)の王――カロンが現れたらしい。カロンがリースに向けた刃を、その身をもって退けたのがクリウス。一体何故、クリウスがリースを庇う状態になったのか。リースからほとんど説明が無かったのでシズクには分からない。しかし、結果的にそれが原因でクリウスが命を落としたという事は真実だった。
 「リース様にとっては、それが何よりも辛いかもしれませんね……」
 「え……?」
 「ご存知ではないのですか? リース様の母君――イーシャ様は、当時幼かったリース様を庇って命を落とされたのですよ」

 ――結局何も、出来なかった。

 独り言のように、今にも泣きだしそうな顔でリースが零していた光景がフラッシュバックする。彼があんな表情を浮かべるのを、シズクは初めて見た。シズクの知るリース・ラグエイジは、嫌味魔人でひねくれ者で、だけどいざとなった時には冷静沈着な面を見せて、感情的なシズクを諌めて正してくれる。そんな人間に見えていた。それも彼の一部である事は確かだろう。けれど、あくまでそれは一部でしかない。
 「わたし、リースの事、ほとんど知らないんです」
 伏し目がちになって零す。そう。本当に知らない。イリスピリアに来て、少しは彼の事を知った気になっていたが、おそらくそれは勘違いだったのだろう。当たり前だ。知ろうとしなかったし、シズクも自分の事をリースに話そうとしなかったから。
 アリスとリースの間にある共通の認識事項が、自分の中にだけ無い事が寂しくないといったら嘘になるが、それも仕方のない事だ。
 だけど。次にリースが目を覚ましたら、今度はたくさん話をしようと思う。どうしても話したい事が一つ、出来たのだから。
 「その目」
 「……?」
 足元を見ていた視線を、大臣の声を受けて上げる。土色の瞳は、真摯な輝きを宿し、こちらを見つめていた。
 「いつだったか。キユウ様もそんな目をしていましたね。……『覚悟』をする瞳だ」
 「覚悟……」
 言われてみれば、案外しっくりとくる。確かにこの感情は覚悟を決めた後のものだ。
 「さて、シズク様。ここでひとつ、私からの提案があります」
 え。と意外そうな声を零すシズクの眼前に、人差し指が突きつけられる。少し視線をずらしたそこには、にこやかにほほ笑むガウェイン大臣の顔があった。この笑顔、どこかで見たような気がする。悪戯を企む時の、いかにも楽しそうな感じの笑み。果たしてそれは、いつだったか――
 「私は、貴方に大きな借りが一つあるんですよね」
 「か、借りなんてそんなもの無いはずです。わたしは――」
 「『星降り』です」
 その言葉を紡いだ途端、いやに既視感を誘っていた笑みを完全に消してから、大臣は真顔になった。どきりとする表情だ。呆然とするシズクの目の前で、彼はそのままゆっくりと首を垂れる。一瞬何をされたのか理解できなかった。だが、理解してからの方が狼狽が激しかった。イリスピリアの12大臣の一人が、たかが17歳の小娘に頭を下げたのだ。異常でないはずがない。
 「ガウェイン大臣! 一体何を!」
 「国防を担う人間が、国の要である『結界』を復活させてくれた人物にお礼を述べるのは、当然の事ですよ」
 結界とは、あの晩シズクが解放したイリスの結界の事だろう。確かに復活させたのはシズクだった。だが、あれは偶然の産物であって、決して意図的にやったものではない。第一、あの後自分は――
 「『星降り』を行えるのはティアミストの人間のみ。貴方がイリスを訪れた時、私は会議で真っ先に結界の張り直しを提言しました。まぁ……陛下に一蹴されましたけどね。10年以上も放置された結界の張り直しなど、今の彼女には危険だと。歴代のティアミスト達でさえ、結界の張り直しは命がけの作業だったのです。持って行かれる魔力が半端ではない。暴走を防ぐために、相当な精神力を必要としたとか」
 それくらいに、困難なものなのですよ。と大臣は言った。
 「ですので。例え偶然の産物だとしても、張り直しの作業を完遂した貴方には、尊敬の念と感謝の念を拭えません」
 「…………」
 意外だった。12大臣は、ネイラスは別として、ほとんど全てがシズクを敵視しているものだと思っていたから。だからこんな風に、ストレートに感情をぶつけてこられると、かえってどういう反応をすれば良いのか、分からなくなる。思い切りうろたえるシズクの姿を見て、大臣は真剣な表情を一瞬で崩して、くすりとほほ笑んだ。あぁそうだ。この企み笑顔。セイラが何かしらを企んでいる時のものに似ているのだ。
 「貴方の望みを。一つだけ、聞き届けましょう」
 「え……?」
 「あの騒ぎの直後ですから、街道が復旧するのも当分先でしょうし、魔族(シェルザード)が動いていると分かった今、通行規制を設ける方向で事が進んでいます。今まで以上に、身動きがとりにくくなるのは必至。ですが、覚悟がおありならば……願いをここに」
 にやりと、ガウェイン大臣はニヒルな笑みをこちらに向ける。彼がシズクに言わんとしている事が、だんだんわかってきた。願いを一つだけ。願いの内容は、もう決まりきった事だ。シズクに覚悟があれば、それは今すぐにでも聞き届けられる。
 では、シズク自身は一体どうしたい? 自問自答を繰り返す。様々な事が頭の中を駆け巡ったが、やがて独特の色を宿した瞳をゆっくりと大臣へと向けた。
 「わたしは――」



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