追憶の救世主

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第2章 「エラリアの姫君」

5.

 午前の授業が終了し、生徒達が昼食を摂るために席をたち始めた。教室の空気は談笑で一気に活気づいて行く。出入り口の扉に向かって歩いていくクラスメイト達の姿を少しの間眺めた後、ミレニア・エレスティンも、いつもお昼を共にしているメンバーを目で探そうとした。そんな時だ。
 「?」
 普段ならば、ジャンに負けず劣らずの勢いで教科書類をしまい込み、お腹が減ったと騒ぐシズクが、今日に限っては未だ席に着いたままだった。不思議に思ってミレニィは彼女の元へ近づいて行く。渋い顔で、シズクは教科書とにらめっこをしているのである。章のタイトルを目で追うと、『召喚魔法の理論』と読める。先ほどまでの授業の内容そのものである。
 「何深刻な表情で読んでるのよシズク。分からないところでもあった?」
 背後から声をかけると、幾分シズクは驚いたようだった。背中をびくりと震わせてこちらを見る。それだけ集中して読んでいたのかも知れない。
 魔法の理論は大抵の場合難解で、余程教え方が上手な教師がやらなければまず間違いなく退屈な授業となる。成績優秀で真面目なクレアですら、たまに意識を飛ばしてしまうらしいのだから、ミレニィももちろん好きではなかった。ジャンやシズクに至っては、常日頃から居眠りの常習犯――ミレニィの中での認識はこうだ。そんなシズクが理論の教科書へやけに熱い視線を注いでいる。興味が惹かれる題材でもあったのだろうか。
 「分からないも何も。理論なんて難しすぎて、分かる事の方が少ないよ。けど……どうなのかな〜って思う事があって」
 へぇと、思わずミレニィは唸っていた。
 「シズクにしては珍しいわね。で? 一体何な訳?」
 「召喚魔法って、言ってしまえば空間を一時的に歪める事だよね。それを応用すれば……瞬間移動とかって出来ちゃったりするのかな。って思って」
 「は?」
 次なるシズクの言葉には、そんな間抜けな声が漏れる。
 「瞬間移動って……。また随分とぶっ飛んだ事言い出すのね」
 魔法理論についてシズクがあれこれ語る事自体珍しいのに、よもやそのような事柄が彼女の口から語られる事になるとは、思ってもみなかった。意外を通り越して拍子ぬけである。シズク自身もそう思うのだろう、苦笑いして肩をすくめてみせる。
 「召喚魔法で歪めた空間を、そのまま繋げてしまえば出来ると思うんだけどさ、理論的には」
 「確かに理論上はそういう事になるわね。けど、そんな芸当出来る人間、実際のところなかなか居ないと思うわよ」
 空間を操る術は、魔法の中でも特に難度が高いとされている。その一種である召喚魔法は、離れた場所から何かを持って来るという技術だが、全ての魔道士が当たり前に行使出来るようなものではない。綿密に組まれた魔法陣の魔力増幅作用のもと、優れた器を持った魔道士が多量の魔力を消費して、ようやく一時的に可能となる技術である。要するに、かなり大がかりな作業と多大な時間を必要とする。空間を歪める行為だけでもこれだけ大仕事なのに、更にその空間同士を繋げてしまうだなんて、はっきり言って人間業ではない。
 魔法は確かに、人知を超える力を行使する事が出来るが、実際のところ、魔法の力を持ってしても出来ない事は多い。魔法を行使するのはあくまで『人』であるからだ。理論的には可能である事も、人の器に収まらない行為の場合、空想の産物と化す。
 「エルフ族でも厳しいわね。魔族(シェルザード)だったら、ひょっとしたら出来る者が居るかもしれないけど……彼らはもう、この世には存在していない一族って言われてるしね」
 いつの間にか姿を消してしまった一族――魔族(シェルザード)。魔道の祖であり、他のどの一族よりも優れた器と魔力を持ち、多くの魔道士を輩出したと言われている。彼らならば、空間を自由に操る事も出来たかも知れない。
 「…………」
 そこまで考えてふと、シズクと体験したとある出来事が頭に浮かんだ。二月ほど前の事だ。深夜の城に現れたルビーという名の女に、自分たちは危うく殺されかけた。あの時、追い詰められたルビーは最終的に、空気に溶けて行くようにして姿を消したのだ。人が空間から忽然と姿を消すような事が起こるなんて、信じられなかった。そういえば去り際の台詞も意味深な物だったように思う。確か、魔族(シェルザード)と――
 「……そうだね。普通の人間になんてさ、使えないよね〜」
 明るいシズクの声が耳に届いたところで、思考に終止符が打たれる。ハッとして前を向くと、独特の色合いの瞳を細めて、彼女は笑っていた。その事に何故か安心して、ミレニィも表情を崩して息をつく。
 「それにしても、何でまたそんな事を考えたの?」
 「もし出来たら便利だなって思ってね。どこに居ても、授業の間だけ学校に戻って来られたら、ミレニィ達に迷惑をかけなくていいのになぁって」
 机上の教科書をパタンと閉じると、カバンの中にそれをしまってからシズクは立ち上がる。そろそろお昼ごはんを食べに出掛けようといった所だろうか。
 昼休みが始まってから5分程。既に生徒達のほとんどは食堂に向かってしまっており、教室内は人の姿もまばらだった。早く食堂へ行かなければ、お目当てのメニューは売り切れになっているかも知れない。
 「…………」
 しかし、ミレニィは歩き出す気分にはなれなかった。急に表情を引き締めると、シズクに真剣な視線を向ける。分かってしまったからだ。
 「……行くの?」
 「うん、来週から。3週間ほどで戻って来る予定だけど、どうなるかは未定かな」
 シズクはこちらに向かってくるクレアとジャンに手を振りながら、他愛も無い会話を交わすようにさらりと告げる。そう、とだけ呟いて、それ以上は訊かなかった。
 (どこへ? 誰と?)
 心の中でだけ、訊けない質問を呟いておく。気にならないと言えば嘘になる。しかし、ミレニィ達の間で決められた暗黙のルールなのだ。

 ――ジーニア・ティアミストの行動に、自分たちは関与しない、しようとしない、と。

 ミレニィ達が知れるのは、イリス魔法学校生であるシズク・サラキスの事だけだ。それに、多分知らない方がいいのだと思う。知ってしまった後では、きっと上手に嘘をつく事が出来なくなるだろうから。
 胸の中に渦巻きかけた靄を振り払うと、小さく笑む。息を吐くと、体の力が良い感じに抜けていった。
 「……ま〜た私に借りが出来た訳ね」
 高くつくわよ。そうおどけて言うと、ミレニィもまたジャンとクレアの方を向く。赤髪のっぽの幼馴染と、みつあみ眼鏡の優等生は、笑顔を浮かべて手を振ってきた。くすりと笑い声が隣から聞こえたのはそんな時だ。
 「いつかまとめて返すよ」






 「断じて、認める訳にはいきませんっ!」

 今が仕事中だという事も忘れて大声でそう告げると、ネイラスは椅子から立ち上がり、執務机の上に激しく両手をついた。きつい印象を他人に与える造りの顔を更に厳しくしかめ、彼は目の前で満面の笑みでふんぞり返っている人物を睨みつける。
 緩くウェーブする髪は金色、イリスピリア王家の典型的な色であるエメラルドグリーンの瞳。黙っていれば引く手数多だろうに。と、城中の人間を嘆息させる事にかけては右に出る者が居ないとも言われるこの国の王女、リサ・ラグエイジは、勝ち誇ったような笑みを浮かべ、仁王立ちの体勢でネイラスに対峙していた。否、彼女が視線を向ける先は正確にはネイラスではない。彼の背後の机で無表情に書類をさばいている父――イリスピリア王だった。
 「…………」
 ふんぞり返る姉の後ろで、彼女にここまで連行されてきたリースは、頭を抱える。頭痛などそう頻繁に経験する性質ではないが、その数少ない経験のうち、発生原因の大半を占めるのは、間違いなく姉のこんな感じの行いか、若しくはセイラのしでかす奇行かのどちらかだと思う。

 ――同行人として、私もエラリアに行くわ。

 執務室に入るや否やきっぱりとリサがそう言いきったのは、先程の事だった。
 「ここのところ不穏な事件が増えているというのに、他国になどもっての外です!」
 リースが想定した通り、ネイラスはしかめ面でリサの希望を突っぱねようとする。だが、姉はそもそもエラリアに行かせてくれとネイラス達に懇願した訳ではない。自分はエラリアに行くのだと、断言したのだ。
 「あら、人選はリースに一任するって事になったのでしょう? リースが私の同行を認めたんだから。今更無理なんて言っても無駄よ」
 直後、ネイラスの射抜くような視線がリースへと突き刺さる。誓って言うが、リサの同行を認めた覚えなど無い。むしろリースだって、こんな暴れ馬をエラリアに持ち込みたくなんてないのだ。だから、虫くらいなら簡単に撃ち落とせてしまいそうな鋭い目線を、ネイラスから向けられる筋合いはない。だが、ここで否定したらしたで、色々と面倒な事になりそうなので何も言わない事に決める。沈黙は金、雄弁は銀。……昔の人はうまい事を言ったものだと思う。
 「リース様に一任といっても、貴方様が選ばれるとなると話は違ってきます」
 「もう! 相変わらず頭が固いのねネイラスは!」
 「な……っ!」
 「単に私の我が侭ってだけじゃないわ。お父様達としても『石』の情報は早急に手に入れたいでしょう? 私が居た方が、絶対早く物事が進むと思うんだけど、違う?」
 「確かに、そういう方面においてはリース様よりリサ様の方が上です。その事はわたくしも重々承知しております。ですが――」

 「――もう良い、ネイラス」

 永遠に続きそうだったリサとネイラスの口論を止めたのは、他ならぬイリスピリア王だった。長い溜息をつくと、書類に注いでいた視線を上げ、リサと同じ色をした瞳を真っ直ぐこちらに向けてくる。
 「リースに一任するといった手前、今更覆す事も出来んだろう」
 「しかし、陛下……」
 「今ここで許可せずに突っぱねてみろ。リサの事だ、城を抜け出してでもエラリアに行きかねんだろうが。……そうなるくらいなら、許可を出して正式に行かせた方が随分とましだ」
 特に最後の方を強調して告げると、イリスピリア王はまた深い溜息をつく。ここ最近、意見が合わない事が多かったが、今回ばかりは全くもってその通りだなと、胸中でリースも父に同意してしまう。尤も、一緒に同行させられるこっちの身としては、許可を出されてしまう事は憂鬱極まりないのだが。
 さすがのネイラスも、この王の言葉を受けて口を閉ざさざるを得ないようだった。口惜しそうにリサの方を見るも、それ以上は何も言ってこない。勝利を確信したのだろう。リサはそれまでにも増して笑顔を輝かせる。そんな時だ。
 「リサよ」
 いつになく真剣な声で名を呼ばれ、リサは笑顔を崩して怪訝な顔になる。リースも眉をひそめて、声の主であるイリスピリア王へ視線を向けた。
 「主賓としてエラリアに招かれている事を忘れぬように。まぁ、その点に関してはお前はうまくやるのだろうが……そこまで自分を売り込んで同行を志願したのだ。それなりの結果を持ち帰られるよう、努力する事だ」
 「分かっています」
 落ち着いた声色で同意の言葉を述べ、リサは背中を伸ばす。それを見て、王はゆっくりと頷いた。職務中常に鋭い光を放つ瞳は、幾分和らいだ色をしている。愛娘の行動に対する大いなる呆れと諦め。そして、僅かな不安。
 「それともう一つ」
 来年で成人を迎える年になっても、父は姉を手元から離す事が恐ろしいのだと思う。じゃじゃ馬な姉が、外界でどのような行いをするのか危惧する面ももちろんあるだろう。だがそれ以上に、重ねてしまっているのだ。
 「エラリアは今現在平和な国だが、魔族(シェルザード)の件もある。……気を付けていくように」
 勝ち気で無鉄砲なところがあるリサは、亡くなった母に性格がそっくりであるらしい。だから父は、彼女を離して、あの時の母のように失ってしまうのではないかと不安なのだ。
 「……分かってるわ」
 そんな父の事を、聡い姉も気づいているだろう。表情を引き締めて告げる。
 「リース。同行を認めたからには、向こうでリサがしでかした事全てに責任を持つように。くれぐれも目を離さんようにな」
 「お父様! 私、いくらなんでももうそんな年じゃないわよ」
 続いての言葉には、リサは大声で抗議の声を上げる。目の前でネイラスが苦笑いを浮かべているのが見えた。
 「…………」
 言っている事は冗談めかしていても、リースを真っ直ぐに捉えるエメラルドグリーンの瞳は決して笑っていない。何度も言うが、リサの同行を認めた覚えはないリースだったが、今回もそれに関しては沈黙を貫く事に決めた。言外に込められた父の真意を感じてしまったからだ。
 「分かってるよ」
 そう呟くと、リースは気だるそうな仕草で肩をすくめたのだった。






 「そうですか」

 淹れたてのお茶を一口飲みこむと、セイラは落ち着き払った言葉でそれだけ告げた。丸眼鏡の奥の瞳は笑っている。穏やかな表情だ。
 「はい」
 小さく呟くと、自身が淹れたお茶を口に含んでアリスも一息つく。
 昨日のシズクとのやりとりを含め、エラリアに行くとセイラに報告したのは、つい先ほどの事だった。アリスの言葉を、この師匠はただ黙って聞いてくれていた。そして、聞き終わった今もまた、否定したり批難したりすることなく、その心をしっかりと受け止めてくれる。
 「いい友達に巡り合えましたね、アリス」
 自分と同じ闇色の瞳を細めると、本当に嬉しそうな顔で、セイラは笑ったのだった。
 「凄くそう思います」
 アリスにとって不幸だったのは、愛すべき家族が悲しい形でバラバラになってしまった事だ。父の犯した罪は消える事はないし、母が犯した事は、これから先もアリスの心を痛め続けるだろう。だが、自分を曝け出す事が出来る人達と巡り合えた。シズクはもちろん、リサやリース。――そして、今目の前に居るこの人もまた。それは、とても幸運な事だと思うのだ。
 「式典には参加しますが、僕はギリギリまでイリスに残る事になりそうです。エラリア王によろしくとお伝えください」
 イリスピリア王も国を離れられないと言ってリースに代理を頼んだくらいである。イリスの町は普段通りの機能を保っているが、東部を中心にして情勢は少しずつ悪くなっている。これは確かな事だった。故に、セイラもまた長くイリスを離れる事は出来ないのだろう。
 「叔父様も、こんな時期に式典を行わなくても、もっと情勢が落ち着いてからでも良かったのに。と思いますけどね」
 苦笑いと共にアリスはお茶をもう一口運ぶ。
 例の声明文以降、世界中がピリピリと張り詰めるようになった。直接アリスは知らないが、その事実と日々対峙しているセイラから教えてもらった事だ。そのような時期に、継承権授与の儀を強行する必要などないのではないかとアリスは思っていた。エラリアでは、確かに13歳の誕生日を迎えないと皇太子にはなれない取り決めだった。しかし、13歳を過ぎれば別に何歳でもかまわないのだ。今でなくても良い。国々が張りつめた中で、他国からたくさんの来賓を招き、式典を行う事に少々違和感を覚える。
 「今だからこそ。だと思いますよ」
 しかし、アリスの言葉に、セイラはぽつりとそう告げてくる。
 「エラリア王は聡明な人だ。この先何が起こりそうなのか、ある程度予想しているのかも知れません」
 「え……?」
 「今はまだ、魔族(シェルザード)達はそう派手な動きをしていませんが……この先きっと、何らかの動きは見せるでしょうね」
 穏やかだった瞳は、瞬時に厳しい光を内包するものへと変貌する。唇を引き結ぶと、アリスは閉口した。平和な場所に居るアリスには、どうしても実感が湧きにくいが、シュシュの町のような悲劇が、再び繰り返される事もあり得る。そう考えると、背筋に冷たいものが流れ込む。
 「『石』を揃えると、世界は何らかの崩壊の危機に瀕する。まぁ、流石にそこまでエラリア王が知っているとは思わないですが……自分の身や国に何かがあってからでは遅い。比較的平和なうちに、彼は幾つかの懸念事項を片づける気なのかも知れません」
 その懸念事項の一つが、継承権問題。国が乱れる可能性が少しでもあるのならば、そうなる前に後継ぎを決めておこうという訳だろうか。彼自身の継承権問題で、内輪の範囲のみに留まるものの王家は乱れたのだ、神経質になってしまうのかも知れない。
 「レクト王子の事だけではありませんよ。アリス、あなたの事もきっとそうだ」
 予想外のセイラの発言に、アリスは伏せていた瞳を見開き、呆けた顔で彼を見た。
 「むしろ今回の継承権授与は、アリスの為かも知れないですね」
 「私の、為……?」
 馬鹿な。そんな事がある訳がない。
 現エラリア王であるセルト王は、自身が皇太子になった事で父との不仲が強まり、レクト王子の暗殺未遂にまで事態が発展してしまったのだ。今回の継承権授与は、あの時の悲劇を人々に連想させる事はあっても、決してアリスを救う事には繋がらない。むしろ、このような状況下でエラリアに帰国したアリスに、城の人間の一部は確実に警戒を抱くだろう。王位なんて欲しくない。可愛い従兄弟を傷つけようとも思わない。けれど、父親が父親なら、娘も娘。そう囁かれるのは目に見えている。
 「アリス」
 穏やかな声で名を呼ばれる。気がつけば、拳をきつく握りしめていた。
 「あなたは、あなたが思っている以上にたくさんの才能に恵まれた人間ですよ。本当だったらもういつでも、僕の弟子を卒業して良いのです」
 「――――」
 優しい顔で、なんて残酷な事を言うのだろうと思う。
 呪術に関して教える事は全て教えた。いつだったか、セイラからそう告げられた事がある。呪術の師として、彼から教わる事はこれ以上無いのだ。それはアリスにも分かっている。だが――
 「私は弟子であると同時に、あなたの『守人』です」
 「それはもちろん。僕の『守人』はこれまでも、これから先も、アリス以外にあり得ません」
 初めて出会った時のように、セイラは真っ直ぐな瞳でアリスを見つめる。硬い殻を破るように。諭すように。
 「ですが、あなたの居場所を僕のもとだと限る必要はない。むしろ、あなたの居場所はエラリアにこそあるべきだ」
 「師匠……」
 「行ってらっしゃい、アリス」
 満面の笑みを浮かべると、セイラはぽんっとアリスの肩を叩く。眼鏡の奥の瞳は、これ以上の問答は無用だと告げている。
 「何、心配しなくても帰って来る場所はいつでも空けておきますから。けれどね……エラリアにも、アリスを必要としている人が居るんですよ」
 明るくもどこか切ない。セイラの言葉は、しばらくアリスの耳から離れなかった。



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